
グランプリ 株式会社トミタ エントリーNo.2522 KOZO VI(KOZO壁紙コレクション)
数ある優れた製品の中で、「KOZO VI」は圧倒的な評価を獲得し、堂々のグランプリに輝いた。
本作は、柄や絵を施した和紙を不燃化することで、壁紙として多様な空間での使用を可能にした製品である。これまで設計者にとって採用が難しかった「和紙」という繊細なマテリアルを、不燃材料として昇華させた点に、大きな革新性がある。
制作過程には、まさに伝統工芸そのものであり、和紙への深いこだわり、作家による筆遣い、手作業による貼り付け、絞りや寄せなど、すべてにおいて高い職人技が宿っている。質感においても、和紙そのものの美しさと力強さが感じられた。
この製品には、日本の伝統と素材、そして技術革新とが高度に融合しており、「本物」だけが持ちうる説得力がある。伝統工芸の継承と進化に、これほどの美しさに挑んだプロダクトに出会えたことは、審査員にとっても大きな喜びであった。
審査委員長 JCD理事長 窪田 茂
準グランプリ 大光電機株式会社 No.2502 ORDER MADE LIGHTING CONTROLLER うつろい パネル意匠と機能をオーダーできる、ライティングコントローラーシリーズ
「JCDプロダクトオブザイヤー」の二次審査は5回目になりましたが、今回が最も難しかったという気がします。どの製品もレベルが高く、実力伯仲でした。「サステナブル・プロダクト賞」にノミネートしていない製品でもサステナビリティー(持続可能性)への配慮がなされているなど、各メーカーの高い意識が垣間見えました。準グランプリを獲得した「ORDER MADE LIGHTING CONTROLLER」は日本の“今”にぴたりと照準を合わせた製品でした。インバウンド(訪日外国人)の増加でホテル需要が拡大するとともに、居心地の良い客室空間が今まで以上に求められています。金属製パネルと、オーディオ機器のようなクロスローレット加工を施した調光ボリュームの高い質感は、空間に落ち着きをもたらすでしょうし、オーダーメードで様々な機能をフレキシブルに割り当てられる点も魅力です。“観光立国・日本”に求められている製品だと思います。
特別審査員 株式会社日経BP社「日経デザイン」元編集長 花澤 裕二
準グランプリ SKWイーストアジア株式会社 No.2512 FRESCOLORI MARANZO・PURAMENTE(フレスカラリ マランツォ・ピュアメンテ)
従来の自然原料系佐官材に比べ高い発色性とともに耐久性、柔軟性を持った本製品は、空間デザインに更なる表現の幅をもたらしうる優れた製品であるといえる。点荷重にも強い耐久性とともに、地震などによる下地のたわみにも耐えうる高い柔軟性を併せ持っている点に好感がもてる。また、保護剤不要で高い耐水性・耐油性を備えているため、水回りをはじめ浴槽にまで施すことを可能とし、シームレスなデザインを叶えられる点も高く評価された。3種類の異なる粒径の材料や40種以上の表情例、日塗工やRAL等による調色にも対応可能であり、あらゆる空間、デザインの実現を可能とする仕上げ材の好例であるといえる。今後の更なる発展に期待したい。
ゲスト審査員 プロダクトデザイナー/株式会社DESIGN FOR INDUSTRY 北川 大輔
審査員特別賞 名古屋モザイク工業株式会社 No.2523 4Dセラミックタイル / 4D CERAMICS
この商品の最大の魅力は表面上の色や柄の処理ではなく内部まで浸透している構造から自然に深みのある質感、ソリッド感が表現されている点である。またその質感も1種類にとどまらず光沢のあるものから落ち着いた梨地のものと使い分けができる選択肢の広いものになっている点も高く評価出来る。
市場ではその使われ方からメラミン化粧板のポストフォームや人造大理石との比較になろうかと思われるが、前者とは圧倒的な質感の差、後者とは「耐熱性」という機能的な面で優位に立っており、もちろん本来の天然石や大理石との比較も加工性やコスト面での違いを発揮している。
私見にはなりますが老舗の名古屋モザイク工業様が従来のスタンダードな路線にとどまらずこういった新商品の開拓に注力されておられことに感服を感じるとともに、クオリティの高い天板として市場を独占する可能性を予感させる秀逸した新商品と思われる。
審査員 JCD理事/関西支部長 中村 裕輔
サステブル・プロダクト賞 大和ツキ板産業株式会社 No.2517 フォレステリア Wood Brick シリーズ
サステナブル・プロダクト賞を大差で受賞したフォレステリアWood Brickは、一つひとつ表情の違う木の個性を最大限に活かし、自然の豊かさをダイナミックに表現した見事に美しい製品でした。ツキ板の端材を手で割き、手で一枚一枚隙間を空けながら貼り付けるという、人の持っている感性までも活かした職人的作業も素晴らしかったです。また、木の材質によって手で割いた時の裂け目のラインがそれぞれ全く違った美しさがあり、大きく波打っていたり真っ直ぐ綺麗に裂けていたりと、素材本来の持つ特徴や色味や質感や手触りなどのさまざまな表情を活かし斬新な見え方に昇華されていました。製品においてサステナビリティ(持続可能性)に対する意識を持つことが当たり前になりつつある今、人の心を動かす情緒的な付加価値が求められているような気がしています。この製品はそういう意味でも自然そのものの魅力を引き出しながら”手作業”の温かさを感じさせられる素晴らしいデザインであると今後の可能性を感じています。
審査員 JCD正会員 三沢 紫乃
総 評
年々盛り上がりを見せている「JCDプロダクト・オブ・ザ・イヤー」が、今年も開催された。
二次審査では、出品者が直接プレゼンテーションを行う形式に変更されてから、今年で5回目となる。今回も熱意あふれる発表が続き、製品に込められた想いや背景が、審査員に強く伝わる機会となった。一次審査を通過した製品は、二次審査を通じてその細部が明らかとなるが、いずれも高い完成度を誇り、設計者やデザイナーが本当に求めているものを的確に捉えている印象を受けた。またサステナビリティへの意識の高まりを感じる製品も増えてきた。今年は特に、「伝統工芸」を現代の技術と融合させようとする姿勢や、ものづくりの技術革新から生まれた製品が強く印象に残った。
応募された製品のジャンルは多岐にわたり、審査員の意見が分かれることも多く、それぞれの製品が高い評価に値するものであった証でもある。最終的にグランプリは選出されたが、それ以外の製品にも「ぜひ使ってみたい」と思わせる魅力があった。こうした優れた製品が、より広く社会に認知され、活用されていくことを願うとともに、本アワードの今後のさらなる発展を期待したい。
審査委員長 JCD理事長 窪田 茂
※印 入賞製品と重複を表しています